映画『青い鳥』は映画館でも観て、
そしてTSUTAYAから借りても
何回か観てきた作品でもあります。

映画のストーリーについては⇒こちらこちら

aoitori

今日は、その映画のいくつかのシーンを
紹介させていただきます。

(心労から休職した担任の高橋先生の
臨時教師として赴任してきた吃音の村内先生は
担当する2年1組に入ってきて)

村内先生『卑怯だな・・・、
忘れるなんて、卑怯だな。

先生は、ど、どもります。

あんまり上手にしゃべれません。

で、でも、本気でしゃべります。
だ、だからみんなも本気で、き、聞いてください。

本気の言葉を本気で聞くのは当たり前のことです。

みんなはそれができなかったから、
先生は、こ、ここに着ました。』

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(いじめに遭い、自殺未遂し
転校していった野口くんの机を
教室に戻した後に)

村内先生「野口くん、お帰り」と
野口くんの机に向かって言う。

ある女子生徒『先生。野口くんはもう転校しました』

(無言でうなずく先生)

井上武志『じゃあ、それ、なんすか? 罰ゲームっすか?』

村内先生「井上くん、ゲームなんかじゃないぞ。
人が本気で生きていく中で、
ゲ、ゲームなんて本当は1つも無いんだ。」

 

(職員会議で)

小泉教頭「野口哲也の机を教室に戻したことに対して
2年1組の保護者から抗議が殺到しています。
大多数が至急机を教室から撤去するよう求めており、
他の学年、クラスからも抗議が出始めています。
何かご意見がございましたら、
みなさん遠慮なく仰ってください」

(教員みなさん無言)

宮崎校長「村内先生、確かにあの事件に関しては、
我々にも反省すべきことがありました。
村内先生には先生のお考えがおありでしょうし、
それは尊重いたします。

しかしいま我々が考えるべきことは
この学校を一刻も早く
いつもの、普通の、日常の生活に戻してあげることです。

私はよく学校を船に例えるんですが、
一番大切なことは子どもたちを全員、
誰一人欠けることなく卒業という港まで
無事に運んで行くことだと思っています。

残念ながら野口くんはこの東ヶ丘中学という船を
自ら降りる結果になってしまった。

でも、この船にはまだ残り356名の生徒が乗っている。
我々には彼らを全員次の目的地まで送り届ける義務があります。
お解かりいただけますね?」

村内先生「船酔いした生徒はどうするんですか?
野口くんは船を降りたくなかった。
絶対に降りたくなんかはなかった。
2年1組に野口くんの机は必要だと思います。」

 

(その後、職員室で2年1組の生徒が書いた反省文を
読んでいる村内先生に対して)

鳥崎先生「その反省文、何度も書き直させたんです。
枚数は必ず5枚以上、どこからも文句がこないよう
校長先生を筆頭にみんなでチェックして、
すべての先生が合格と認めるまで
5回も6回も書き直させたんです。

でも、書き直させる度に
生徒の顔が見えなくなっていくんです。

どれも一緒、思いやりを持って、
助け合って、みんな仲良く、
友情を大切にするクラスに・・・。

子どもたちはどんな思いで書いていたんでしょう。

なんだか試験の解答を覚えているように、
反省だとか、後悔だとか、
みんな同じような言葉が並んで。

それを書かせることで
何か教えることができたのでしょうか!?

人を教えるって、
いったいどうしたら良いんでしょう?」

(村内先生は無言で立ち去り、
生徒の書いた反省文を焼却してしまう)

 

(総務委員会で、いじめ相談ポストの
青い鳥BOXに入っていた中身を確認し)

≪誰かを嫌うのも、いじめになるんですか?
それとも好き嫌いは
個人の自由だからOKですか?≫

というメッセージが入っていたが
生徒指導の石野先生はそれを採りあわず
「それを片づけて」という。

そしてお開きにしようとした石野先生に対して
生徒の園部真一が「石野先生」と呼びかけ、
「教えてください。誰かを嫌うのも、いじめになるんですか?」

石野先生「あれ書いたのお前か?」

園部真一「違います。でも僕も解からないんで教えてください」

石野先生「それもいじめだ。みんなで一人の子を嫌って、
無視して意地悪な事をしたらいじめになるだろ」

園部真一「でも、こっちも一人だったら?
一人で心の中で思っているだけなら、
いじめにならないんじゃないですか?」

石野先生「最初は心の中で思っているだけでも
すぐ態度や行動に出るようになるんだ。
一人が二人になって、三人、四人と増えていくんだ・・・」

園部真一「じゃあ、先生には嫌いな人はいないんですか?」

石野先生「いない。生徒の好き嫌いなんてあったら
学校の教師なんてやっていけないだろ」

園部真一「生徒じゃなくて、大人の中で
嫌いな人っていないんですか?
今までそういう人っていなかったんですか?」

石野先生「おい、2年1組はあれだけ反省して
屁理屈しか覚えなかったのか?」

園部真一「そうじゃなくて・・・」

静かに窓の外を見ながらやりとりを聴いていた村内先生が
「園部くん、もう、やめろ。
君は間違っている。」

石野先生「村内先生の言う通りだ。
頭冷やしてもう一回考えろ」

村内先生「みんな間違っている。
園部くんはいま本気で言った。
本気で言ったことは本気で聴かないとダメなんだ。

いじめは人を嫌うからいじめになるんじゃない。
人数がたくさんいるからいじめになるんじゃない。
人を踏みにじって苦しめようと思ったり、
苦しめていることに気づかずに
苦しんでいる声を聴こうとしないのがいじめなんだ。」

 

(園部真一は委員会を飛び出し、
教室に戻り野口くんの机の落書きを消しゴムで消し始める。

そこに村内先生が入ってきて)

園部真一「先生、どうして野口の席、作ったのですか?
どうして毎朝、野口の席に声を掛けるのですか?」

村内先生「だって、野口くんはずっと、
この教室にいたかったんだから・・・。

ここにいたくて、でもいられなくなって、
本当はみんなと一緒にずっとここに
座ってたかったんだから。

だから先生は野口くんの名前、
ずっと呼んでやるんだ。

みんなが野口くんを踏みにじった。

野口くんの苦しみに気づかないほど、
彼を軽くしか見ていなかった。

だから先生は野口くんのことを
クラスで一番大切にしてあげたいんだ。」

園部真一「でも、もう本人いないじゃないですか?
何やったって本人分からないじゃないですか?」

村内先生「野口くんがいなくても、
みんながいるから・・・」

園部真一「それって、僕たちに罰を与えてるってことですか?
だって罰じゃないですか・・・。
野口のことを忘れるのを許さないって、
僕たちに罰を与えてるわけでしょ?」

村内先生「そうじゃない。」

園部真一「じゃあ、何なんですか?」

村内先生「責任だ。」

園部真一「だから僕らは反省もして、後悔もして、
野口にたくさん謝って、
それでまた一からやり直そうと」

村内先生「それは卑怯だ。
一からやり直すなんて卑怯だろ。

野口くんは忘れない。
みんなのことを、恨むのか、
憎むのか、許すのか、知らないけど、
一生、絶対に忘れない。

みんなは一生忘れられないようなことを
野口くんにしたんだ。

だったらみんながそれを忘れるのって卑怯だろ。

野口くんのことを忘れちゃダメだ。

野口くんにしたこと、忘れちゃダメなんだ。

それが責任だ。

罪になっても、罪にならなくても、
自分のしたことに責任を取らなくちゃダメなんだよ」

園部真一「野口、笑ってたんですよ。
笑いながら言ってたんですよ。
『もう勘弁してくださいよ。
それ、シャレになんないすよ。
いえ、遅刻っすよ、それ。
まじ、最後っすからね。
アンコール無しっすからね。
あと、もう死ぬっきゃないっすよ。』」

村内先生「いろんな人がいるんだ。
先生みたいに言葉つっかえ喋れない人、
野口くんみたいに冗談っぽく言えないと
本気で喋れない人もいる。」

園部真一「俺、あいつん家のコンビニで
よく一緒に立ち読みとかして、
だからあいつ、俺に助けて欲しかったんです。

なのに俺、みんなと一緒に笑って
あいつが遅刻っすよってやるたんびに
笑ってたんです。

俺が、俺がポテトチップと言ったときに
あいつ、ほんの一瞬、俺の顔を見たんです。

ほんと、悲しそうな目で、
チラッと俺のこと見たんです。

俺、それ、分かったんですよね。
あいつの遺書にあったの、俺なんです。
あいつ・・・、絶対一番に俺の名前書いたはずなんです。
絶対そうなんです・・・。

村内先生「いまの気持ち、もう忘れるな。
そうやって心の中で繰り返してきたことを、
これから自分のために忘れるなよ」

園部真一「先生、そうすれば
俺、今度はもっと強くなれますか」

村内先生「強くなんてならなくていいんだ。
人なんてみんな弱いんだから・・・。
だから本気で頑張るんだ。」

 

(休職していた高橋先生が復帰することになり、
学校を去る村内先生が校門まで歩いていく中、
鳥崎先生がその後を追うように追いかけ)

鳥崎先生「村内先生・・・」

村内先生「鳥崎先生、きっと人に
何かを教えることなど
簡単にできることではありません。

教師にできるのは、
たぶん、生徒のそばに
いてあげることだけなのかもしれません。

もし、運が良ければ
何かを伝えることが
できるかもしれない・・・。」

鳥崎先生「村内先生・・・」

(無言で軽く会釈する村内先生)

鳥崎先生「お世話になりました」

村内先生「こちらこそ、お世話になりました」

 

この映画は教育関係者をはじめ、
多くの人に観ていただきたい作品です。

映画を観ていくと、最初は
村内先生の本気の言葉を
聞こうともしなかった生徒も、
本気で村内先生は接し続けることで
生徒の心が動き始める様子が覗えます。

人の心が動くには時間がかかります。

それを無理に強引な手法でやろうとしても、
上辺では優等生な態度をしたとしても
相手の心は動いていないものです。

もし人の心を動かすことができるとしたら
本気で静かな口調で語りかけ続けることかもしれません。

以前、オーストラリア出身で
世界のトップコーチとして活躍している1人である
デービット・ロック氏が日本に来て
ある大会で基調講演をしてくださったときに、

デービット・ロック氏は脳の働きについても
よく研究されている方なんですが

人間の脳というのは
誘導されたりコントロールされそうになると
頭の中でノイズが走ったり
時にはシャッターを降ろしてしまうこともある、
ということも考えれば・・・。

『優しい言葉で相手を征服することができないような人は、
いかつい言葉でも征服はできない。』

これはロシアを代表する劇作家、
アントン・チェーホフ氏の名言です。

征服という言葉は
ちょっと受け取り難い言葉だと思いますので
こう言い換えたらどうでしょう。

優しい言葉で相手の心まで届けることができなければ、
命令口調や暴力行為でも相手の心まで届けることは、限りなくない。
(絶対無いと書かないのは、今後違う場面で書いたいと思います)

それと最後に、
実社会でいじめが起きても、
人の命や人生に係わる問題なのに、
面倒くさい事が起きた程度しか考えられない人や、
儀式感覚の反省しますという態度を見せ、
早く事態を収拾させたいだけのような、
まるでゲームのようにリセットすれば
また一からやり直せる程度に捉えている学校教育や社会の下では
私はいじめは無くならないと思います。

人の命や人生を扱っていると
もっと本気で真剣に、
そして自分の考動や言動には
責任が伴うという意識の下で
係わっていく社会にならなければ・・・。

※これは以前私がNOTEで2015/03/28にアップした記事を
こちらにも再投稿した後にNOTEの方は削除させて頂きました。

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