ロシアのプーチン大統領が

明日から2日間の日程で来日する。

今日の朝日新聞朝刊の一面には

『領土交渉 対ロ制裁が壁』の文字が躍る。

 

この対ロ経済制裁についてですが、

確かこの一件は、親ロが多く住むウクライナが

議会制民主主義に則らない政権交代が起きたため、

ロシアはウクライナ・クリミア半島の併合に動き、

そのことにより、

対ロ経済制裁が始まったと私の中では記憶しています。

 

もし仮にウクライナが議会制民主主義に則った

政権交代が行われていたならば、

ロシアも強硬手段は起こさなかった可能性もあるわけで、

だとしたらロシアの主張にも耳を傾けらければならなかったのに

一方的に対ロ経済制裁が行われてしまったわけですから、

ここら辺で対ロ経済制裁の見直しがあってもいいのでは?

と私は考えています。

 

さて、今回のプーチン大統領の訪日では

北方領土交渉も行われるようなので、

この機会に2つの記事を引用させていただきます。

二島を返さぬ意思鮮明

日ロが「係争地」と認めているはずの北方領土に
メドベージェフ大統領がついに足を踏み入れた。

日本側の警告にもかかわらず、なぜなのか。

まずは、国内事情がある。

ロシアは来年末の下院選、
2012年の大統領選に向けた
「政治の季節」に入り、国民に、
大統領の強さを見せる必要性が高まった。

「双頭体制」を組む大統領とプーチン首相が
共に国内をくまなく視察、
経済の現実化に弾みを付けようとしている。

社会基盤整備に多額の費用を投じている
北方領土での視察は、
その延長線上にある。

しかし、そこには日本側へのメッセージも
当然込められている。

今の民主党政権を見限り、
国後島・択捉島は返さない意思を鮮明にし、
日本に妥協の決断を迫ることだ。

日本の昨秋の政権交代で
親ロ派の鳩山由紀夫氏が首相になり、
ロシアでは期待が高まった。

その直前に日本の国会で
「北方領土はわが国固有の領土」と明記した
改正北方領土問題等解決促進特別措置法が成立し、
ロシア側は神経をとがらせていたからだ。

だが、鳩山内閣は退陣し、
「妥協」を引き出す期待はしぼんだ。

逆に、
「ロシアは北方領土を不法占拠している」と
繰り返した前原誠司氏が外相に就任し、
日本の原則的立場を強調する管政権への
失望が膨らんだ。

大統領が9月末に初めて訪問の意図を示したのは、
こうした時期だった。

ロシアは08年、一時は紛争にまで至った
中国との国境画定を最終決着し、
今年はノルウェーと40年に及ぶ海域論争にも終止符を打った。

国内の反発を抱えながら、
いずれも2等分方式で解決した。

「第2次世界大戦の結果、
四島はソ連に移った」とするロシア側には、
日本に対しても自らは妥協を示してきたという意識がある。

プーチン氏は大統領当時、
1956年の日ソ共同宣言を基礎に
歯舞・色丹の引き渡しまでは応じる姿勢を見せた。

08年に就任したメドベージェフ大統領は
「新たな独創的で型にはまらないアプローチ」を提唱した。

大統領が「四島」からの歩み寄りを
求めていたのは確かだ。

ロシア側から見れば、
妥協を求めるシグナルを送り続けたが、
むしろ妥協から遠ざかっていると
受け止めている。

今回の訪問は、こうした局面を
一気にリセットしようとした荒業にもみえる。

(モスクワ=副島英樹)

※朝日新聞2010年11月1日の朝刊より
引用させていただきました。

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北方領土問題
敬う心で引き分けをめざせ

柔道家 山下泰裕

北方領土問題を巡るプーチン大統領の
「引き分け」発言に、
私は同じ柔道家として大変納得している。

日本はソ連、ロシアと60年以上
交渉を続けているが、
いまだに解決していない。

もはや大統領が言うように、
引き分けしか落としどころは
ないのではないか。

日ソいずれの国民も同程度の不満を残しながら、
決着を図るのである。

私は外交の専門家ではない。

ただ、両国が自国の主張ばかりして譲らなければ、
この問題は永久に未解決ということは分かる。

柔道の大事な精神に
「対戦相手を敬う」がある。

交渉においても自己の主張から離れ、
相手の立場を考えることが必要だ。

私はこれまで20回ほどプーチン氏と会い、
人柄や日本への好意を肌で感じている。

忘れられないのは、
2005年の来日の際の言葉だ。

プーチン氏が尊敬する講道館の創設者、
嘉納治五郎直筆の書を贈ったお礼の食事の席で、
氏は「日本とロシアの間には
昔からの難しい問題が一つある。

逆にこれ以外は何もない。

別に問題を作ろうとも思わない。

両国が知恵を絞って解決したら、
障害はなくなる」と語った。

難しい問題、
つまり領土問題の解決と
日ソ関係の強化への思いは、
今も変わらないと思う。

旧ソ連国家保安委員会(KGB)という出自から、
信用できないとか、
強権的とか言われることもあるが、
私の印象は違う。

2年前、首相府で会ったプーチン氏は、私の
「日ソの信頼関係が深まることを期待している」という言葉に、
身を乗り出して「お互いにプラスになる形で
経済交流をやりましょう」と言い切った。
真摯な態度に、信用できる人だと確信した。

柔道も交渉も最後は人対人の関係だ。

プーチン氏は交渉の場では表情を変えず、
本心が読みにくいと聞く。

柔道やKGBで養った観察眼は鋭く、
当たり障りなく立ち回ろうとしても
うまくいかないだろう。

ロシア人は本音の言い合いを好み、
ぶれない人を評価する。

本気でかかることだ。
日本の姿勢が問われる。

日本へのロシア人の感情はとても良いのに、
ロシアに対する日本人のそれは最悪だ。

シベリア抑留もあって無理がない面もあるが、
そこにとどまるのは無意味だ。

プーチン氏はシベリアや極東の経済発展のため、
日本の進出を期待している。

日本にも利益がある話だ。

両国が互いに尊重し
引き分けを受け入れることが、
国益にかなうと考える。

※朝日新聞2012年5月23日の朝刊から
引用させていただきました。

 

4島全てが返還されないとしたら、

日本とすれば悲しい出来事ではあるが、

総合的な判断が求められる時期なのかもしれません…。

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